高齢者が交通事故の被害に遭った場合の慰謝料は通常や逸失利益の決まり方
2023年06月12日
交通事故はあらゆる年齢層に影響を及ぼしますが、高齢者が被害に遭った場合、その影響はさらに深刻となる可能性があります。
今回の記事では、高齢者が交通事故に遭った場合の損害賠償の決まり方について、詳しく解説します。
後遺症が残ってしまった場合や、死亡事故の場合の損害賠償についても解説するため、ぜひ参考にしてみてください。
高齢者が交通事故に遭う割合
一般的に、高齢者は交通事故に遭ってしまう割合が高いとされています。
警視庁交通局が発表している「令和4年における交通事故の発生状況について」の資料によると、近年の交通事故の被害者状況は以下のとおりです。
年 | 全死者数 | 高齢者死者数 | 全重傷者数 | 高齢者重傷者数 |
---|---|---|---|---|
令和2年 | 2,839人 | 1,596人(56.2%) | 27,775人 | 10,605人(38.2%) |
令和3年 | 2,636人 | 1,520人(57.7%) | 27,204人 | 10,020人(36.8%) |
令和4年 | 2,610人 | 1,471人(56.4%) | 26,027人 | 9,853人(37.9%) |
死者数において高齢者が占める割合は例年55%以上、重傷者数においては例年35%以上を推移しています。
なお、上記のデータにおける「高齢者」は65歳以上の人が対象です。
高齢者が若い人よりも交通事故被害に遭いやすい理由としては、加齢による動体視力や判断力の低下や、体力・筋力の衰えなどの影響が考えられます。
損害賠償の金額は年齢で変わる?
損害賠償の金額は、項目によっては年齢で変わる可能性があります。
交通事故で請求できる主な損害賠償の項目には、以下のようなものが挙げられます。
・治療費
・通院交通費
・装具・器具購入費
・入通院慰謝料
・後遺障害慰謝料
・死亡慰謝料
・休業損害
・逸失利益
治療費や通院交通費、装具・器具購入費など、実際に支出した金額は「積極損害」と呼ばれ、被害者の年齢に関係なく加害者側に請求できます。
入通院慰謝料は基本的に入院や通院の期間によって決まり、後遺障害慰謝料は後遺障害の等級によって決まるため、これらの請求にも被害者の年齢は影響しません。
しかし、休業損害・逸失利益・死亡慰謝料については、被害者が高齢である点を考慮され、請求できる金額が変わる可能性があります。
そもそも高齢者とは何歳以上を指すのか?
高齢者の定義は状況や目的によっても異なりますが、国連のWHO(世界保健機関)が基準としている65歳以上の人を高齢者と呼ぶのが一般的です。
日本では、高齢者を65歳~74歳の「前期高齢者」と、75歳以上の「後期高齢者」に分類しています。
また、日本年金機構が定めている国民年金の支給要件は、原則として65歳以上です。
高齢者が交通事故に遭った場合、仕事に就いているかどうかや年金受給の有無などが損害賠償金額に影響する可能性があります。
交通事故被害者が高齢者の場合の休業損害
交通事故の被害者が高齢者であった場合、休業損害を請求できるかどうかは被害者の就労状況によって異なります。
休業損害とは、交通事故によるケガが原因で、仕事を休まなくてはならなくなった場合に減った収入です。
そのため、仕事をしている高齢者であれば、減った収入を休業損害として加害者側に請求できます。
しかし、高齢者で無職または年金受給者の場合、基本的に休業損害は請求できません。
無職であっても、家事従事者や就労予定のある高齢者は休業損害が認められる可能性もあるため、まずは被害者自身の就労状況を確認しましょう。
交通事故被害者が高齢者の場合の逸失利益
交通事故による逸失利益を請求できるかどうかは、被害者である高齢者の収入に影響されます。
逸失利益とは、交通事故に遭っていなければ本来得られていたはずの利益・収入です。
逸失利益には後遺障害逸失利益と死亡逸失利益があり、事故の被害状況によって請求できる金額が異なります。
無職で収入のない高齢者は、基本的に逸失利益の請求は認められません。
しかし、事故前に仕事や年金受給による収入があり、交通事故の影響で収入の減少が見込まれる場合には、その損害を逸失利益として加害者側に請求できます。
交通事故で高齢者に後遺症が残った場合
交通事故で高齢者に後遺症が残ってしまった場合、後遺障害等級が認められれば「後遺障害慰謝料」を加害者側に請求できます。
後遺障害等級は症状の程度によって1級から14級に分類され、1級に近づくほど症状が重く、慰謝料も高額になります。
等級に応じた後遺障害慰謝料相場は、以下のとおりです。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料相場 |
---|---|
1級 | 2,800万円 |
2級 | 2,370万円 |
3級 | 1,990万円 |
4級 | 1,670万円 |
5級 | 1,400万円 |
6級 | 1,180万円 |
7級 | 1,000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
後遺障害慰謝料の算定方法には自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つがあり、上記はもっとも高額な弁護士基準の慰謝料相場です。
任意保険基準は保険会社によって異なるため一概にはいえませんが、基本的に自賠責基準と同程度、もしくは少し高い程度が目安となります。
交通事故で高齢者が亡くなった場合
交通事故で高齢者が亡くなってしまった場合、遺族は加害者側に対する損害賠償請求が可能です。
被害者が死亡した事故で請求できる可能性のある損害賠償を、次の項目別で解説します。
・死亡慰謝料の相場
・死亡逸失利益の決まり方
・葬儀費用は請求できる?
それぞれの損害賠償について、以下で詳しく確認していきましょう。
死亡慰謝料の相場
死亡慰謝料にも自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つの算定方法があり、それぞれ相場が異なります。
もっとも高額な弁護士基準の死亡慰謝料相場は、以下のとおりです。
亡くなった被害者の立場 | 死亡慰謝料相場 |
---|---|
一家の支柱 | 2,800万円 |
一家の準支柱(母親・配偶者など) | 2,500万円 |
その他(高齢者・子どもなど) | 2,000万円~2,500万円 |
弁護士基準の慰謝料相場は、亡くなった被害者の立場によって死亡慰謝料の金額が異なります。
高齢者の死亡慰謝料相場は、基本的に2,000万円~2,500万円です。
しかし、経済的に家族を支えている立場であった場合は、高齢者であっても相場より高額な慰謝料を受け取れる可能性があります。
死亡逸失利益の決まり方
死亡逸失利益は、被害者である高齢者の収入状況によって算定方法が異なります。
死亡逸失利益とは、交通事故で死亡してしまったために、被害者が将来得られるはずの利益を失ったことによる損害です。
死亡逸失利益は、以下の計算式によって算出されます。
死亡逸失利益=基礎収入×(1‐生活費控除率)×ライプニッツ係数 |
事故被害者の高齢者が仕事に就いていた場合は事故前の収入、年金受給者の場合は年金支給額を基礎収入として計算するのが一般的です。
年金には逸失利益性が認められるものと認められないものがあるため、請求する際は注意しましょう。
逸失利益の計算は生活費控除率やライプニッツ係数など複雑な要素も多いので、一度弁護士に相談してみるのがおすすめです。
葬儀費用は請求できる?
被害者が亡くなった死亡事故では、葬儀費用も加害者側に請求できます。
葬儀費用として請求できるのは、以下のような費用です。
・通夜・葬儀費用
・四十九日の法要代
・位牌費用
・墓石費用
・仏壇費用
葬儀費用における損害賠償金の相場は、150万円程度とされています。
遺族以外の参列者の交通費や香典返しの費用、四十九日以降の法要代などは、葬儀費用に含まれないため注意が必要です。
交通事故で高齢者が得られる損害賠償額を知って適切な補償を受けよう
交通事故の損害賠償金額は、被害者である高齢者の就労状況や収入・家庭内の立場などによって変動する場合があります。
適切な損害賠償金を受け取るためには、専門家である弁護士に相談してアドバイスを受けるのがおすすめです。
弁護士に依頼すると弁護士基準で慰謝料を算定でき、受け取れる損害賠償金の増額を見込めます。
また示談交渉など手間のかかる手続きを任せられるため、被害者や被害者家族の負担を大幅に軽減できるでしょう。
当事務所のWEBサイトをご覧いただきありがとうございます。福井県内での移動は、車での移動が当たり前の「車社会」になっています。ただし、その反動として、福井において、不幸にして交通事故に遭われてしまう方が多数いることも事実です。しかしながら、福井県民の中で、交通事故の被害に遭ったときに弁護士の相談するという発想自体がないこと、弁護士が入れば適正な賠償金額を得ることが出来るということ等を知らない人が多いと実感しています。もし、皆様の周囲で交通事故被害に遭い、お悩みになられている方がいらっしゃいましたら、まずはお気軽にご相談下さい。