運行供用者責任とは?使用責任者の違いは?
2024年02月5日
交通事故が発生した際、被害者は加害者に対して損害賠償を請求できますが、事故状況によっては加害者だけでなく運行供用者にも責任が生じる可能性があります。
今回の記事では、運行供用者責任の概要や、運行供用者責任が問題となる交通事故の事例について具体的に解説します。
直接の加害者である運転者だけでなく、運行供用者にも損害賠償請求した方がいいケースについても解説するため、ぜひ参考にしてみてください。
運行供用者責任とは?
運行供用者責任とは、自動車の運行を管理しそれによって利益を得ている者が、運行中に生じた交通事故について賠償責任を負うことです。
運行供用者責任は、自動車損害賠償保障法の第3条によって定められています。
(自動車損害賠償責任) 第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。 |
交通事故で運行供用者に該当する人がいる場合、被害者は運転者と運行供用者の双方に損害賠償請求が可能です。
どちらかに全額請求するか、もしくは双方に何割ずつ請求するかは被害者が選択できます。
被害者がどちらの方法を選んだとしても、後々運転者と運行供用者で負担額の清算が行われます。
運行供用者の要件
運行供用者の要件は、以下の2つです。
・自動車の運行について支配・管理している(運行支配)
・自動車の運行によって利益を得ている(運行利益)
車の運行を管理し、それによって利益を得ていると判断される人は、運行供用者に該当する可能性があります。
具体的には、自動車の所有者や管理者などは運用供用者に該当するのが一般的です。
そのほかにも、タクシーやバス・社用車などを所有する法人も、運行供用者責任の対象となります。
車を他者に運転させたり貸したりする場合などにも、間接的な支配が及んでいると考えられるため、運行供用者に該当します。
運行供用者責任と使用者責任の違い
運行供用者責任と似た言葉として「使用者責任」がありますが、この2つは主に賠償責任を負う人の範囲や賠償範囲が異なります。
運行供用者責任は、自動車などの運行中に発生した事故に対して、自動車の所有者などその運行によって利益を得ている人が負う責任です。
対して使用者責任は、交通事故を起こした運転者と使用者の間に雇用関係がある場合に、使用者が負う責任です。
また運行供用者責任は人身事故の損害に対してのみ発生しますが、使用者責任は人身事故・物損事故を問わず損害全般に対して発生します。
そのため、社用車を使用している従業員が人身事故を起こした場合、従業員を雇用している会社には運行供用者責任と使用者責任の両方が成立する可能性もあります。
運行供用者責任が問題となる交通事故の事例
運行供用者責任が問題となる交通事故について、次の4つの事例を紹介します。
・レンタカー利用中の事故
・タクシーによる事故
・他人から借りた自動車での事故
・盗難した自動車での事故
各事例において運行供用者責任がどのように関係するのか、以下で一つずつ見ていきましょう。
レンタカー利用中の事故
レンタカーを利用中に発生した交通事故では、多くの場合レンタカー会社に運行供用者責任が生じます。
レンタカー会社はレンタカーの運行を事業として行っており、運行支配および運行利益のある運行供用者であると判断されるためです。
ただし、借主側が返却期間を大幅に超えて車両を利用していた場合や、車両を第三者に無断で貸し出していた場合は、運行供用者責任は成立しない可能性があります。
タクシーによる事故
タクシーによる交通事故では、基本的にタクシー会社が運行供用者責任を負います。
タクシー会社は、タクシー運転手を雇用し、自社の利益のために社用車であるタクシーを運行させているためです。
運転手に過失がある場合は、被害者は運転手本人とタクシー会社に対して損害賠償を請求できます。
他人から借りた自動車での事故
他人から借りた自動車で事故が発生した場合、原則としてその車両の貸主である所有者は、運行供用者としての責任を負います。
家族や友人に貸し出し中であっても、所有者はいつでも返還を求められる状況にあり、運行支配は継続していると考えられるためです。
ただし、車両の貸借条件や貸したときの状況によっては、所有者に運行供用者責任を問えないケースもあります。
盗難した自動車での事故
盗難した自動車による事故でも、状況によっては車両の本来の所有者に運行供用者責任が生じる可能性があります。
盗難車の事故による運行供用者責任の判断は、駐車場所や施錠状況、盗難から事故発生までの時間などが重要視されます。
たとえば誰でも通行できる場所で、施錠せず自動車を放置していた結果盗難され事故が起こった場合、車両の所有者は運行供用者責任を負う可能性が高いでしょう。
運行供用者でも責任が生じない可能性もある
運行供用者に該当したとしても、必ず責任を負わなければならないとは限りません。
以下の事実を証明できれば、運行供用者であっても責任を免れます。
・自己および運転者が自動車の運行に関して注意を怠らなかった
・被害者または運転者以外の第三者に故意や過失があった
・自動車に構造上の欠陥や機能の障害がなかった
ただし、これらの事実を証明するのは困難な場合が多いです。
運行供用者となる要件に該当する場合、基本的に責任から逃れるのは難しいと考えるべきでしょう。
運行供用者にも損害賠償請求した方がいいケース
交通事故において、運行供用者にも損害賠償請求した方がいいケースは次のような場合です。
・加害者が任意保険に加入していない場合
上記に該当する状況であれば、運転者だけでなく運行供用者に対しても賠償請求するのが適切といえます。
以下で具体的に確認していきましょう。
加害者が任意保険に加入していない場合
加害者が任意保険に加入していない場合、被害者が十分な補償を受けられない可能性があります。
交通事故の損害賠償金は、最低限の金額が加害者側の自賠責保険から支払われ、自賠責保険金を超える金額は加害者側の任意保険から支払われるのが一般的です。
しかし、任意保険に加入しておらず、加害者側に支払い能力がなかった場合には、損害賠償金を一括で支払ってもらえなかったり踏み倒されたりするリスクが生じます。
このような場合、運行供用者に対しても損害賠償請求を行うのが有効な手段となるでしょう。
運行供用者責任に関する交通事故で迷ったら弁護士に相談しよう
交通事故における運行供用者責任は、事故状況によって個別に考慮する必要があり、判断が難しいケースも多いです。
もし交通事故に巻き込まれてしまい、運行供用者責任が適用されるのか悩んだら、専門家である弁護士への相談を検討してみてください。
交通事故問題に注力した弁護士であれば、運行供用者責任の適用の有無や損害賠償の請求について、適切なアドバイスを得られるでしょう。
当事務所のWEBサイトをご覧いただきありがとうございます。福井県内での移動は、車での移動が当たり前の「車社会」になっています。ただし、その反動として、福井において、不幸にして交通事故に遭われてしまう方が多数いることも事実です。しかしながら、福井県民の中で、交通事故の被害に遭ったときに弁護士の相談するという発想自体がないこと、弁護士が入れば適正な賠償金額を得ることが出来るということ等を知らない人が多いと実感しています。もし、皆様の周囲で交通事故被害に遭い、お悩みになられている方がいらっしゃいましたら、まずはお気軽にご相談下さい。