交通事故で同乗者になった際の損害賠償請求先
2022年06月8日
車に同乗している際に交通事故が起こった場合、同乗していた車の運転手か相手方の運転手、またはその両方に対して損害賠償が請求可能です。
同乗者の損害賠償請求先はやや複雑ですので、今回の記事でケース別に詳しく解説していきます。
同乗していた際の状況によっては、賠償金の減額や刑事処分につながる可能性もあるため、注意すべき点もしっかり確認しておきましょう。
後半では、同乗者が補償を受けられる保険の種類についても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
同乗していた車が交通事故に遭った際の損害賠償請求先
同乗していた車が交通事故に遭った際の損害賠償請求先について、次のケース別で解説します。
・もらい事故の場合
・双方に過失があった場合
・同乗していた運転者のみに過失がある場合
・相手方に過失がなく運転者が家族だった場合
交通事故で同乗者としてケガなどの被害を受けたとき、損害賠償請求を誰にするべきかは状況によって異なるので注意が必要です。
各状況別の損害賠償請求について、以下で詳しく解説します。
もらい事故の場合
もらい事故とは、停車・駐車中に追突された場合など、片方にまったく責任のない損害事故をいいます。
たとえば、信号待ちで停車していた際に後方車両が追突してきたケースなどが、もらい事故の典型的な例です。
もらい事故の場合には、事故を起こした相手方に損害賠償の支払いを請求します。
もらい事故の場合には、100%過失のある相手方のみが責任を負うため、事故の相手方が損害賠償請求先となります。
双方に過失があった場合
同乗していた車の運転者と相手方のそれぞれに過失があった場合は、同乗者は双方に損害賠償の請求が可能です。
故意または過失によって被害者に損害を与えることを「不法行為」といい、複数人で行う一つの不法行為を「共同不法行為」といいます。
交通事故の場合は、基本的に車の運転者双方に過失があるため、共同不法行為が成立し両者に賠償責任が生じるのです。
どちらに対しても損害賠償を請求できますが、二重取りができるわけではないので注意しましょう。
同乗していた運転者のみに過失がある場合
相手方に過失がなく、同乗していた車の運転者のみに過失がある場合は、運転者に損害賠償請求が可能です。
車同士の交通事故で片方にのみ過失があるケースは少ないですが、前述したもらい事故の逆のケースが発生した場合には、同乗していた車の運転者に全責任が生じます。
たとえば同乗していた車が、信号待ちで停車している前方車両に追突した交通事故などです。
同乗していた車の相手方は、もらい事故の被害者となるため賠償責任はありません。
相手方に過失がなく運転者が家族だった場合
同乗していた車の運転者のみに過失があったケースが生じた際、その運転者が家族であった場合には注意が必要です。
1.自賠責賠責保険について
自賠責保険での補償対象は、
・運転者
・運行供用者
以外の『他人』とされています。
自賠責保険における『他人』かどうかについては血縁は関係がなく、運転者の車に家族が同乗していても、その家族は自賠責保険の補償の対象となります。
ただし、その家族が運行供用者の場合は補償されませんので、注意が必要です。
たとえば、夫が所有する車を妻が運転中に、誤って他の車に追突させ、夫に傷害を負わせてしまった場合です。この場合、夫は車を所有しており、運行供用者にあたるからです。
2.任意保険について
同乗者は運転者に対して損害賠償を請求できるのですが、運転者であった家族が加入している保険の契約内容によっては、保険金を受け取れない場合があります。
一般的な自動車保険では、交通事故による被害者が被保険者の父母・配偶者・子の場合は保険金支払い義務が免責となっているためです。
「人身傷害保険特約」や「搭乗者傷害保険」を契約している場合など、家族でも保険金を受け取れるケースもあるので、契約内容をよく確認しましょう。
同乗者に過失がある場合は状況により異なる
同乗者である自分自身になんらかの過失があった際は、その状況によって賠償額が減額されたり、同乗者が罪に問われたりする可能性があるので注意してください。
・運転者の飲酒運転を黙認
・運転者の危険運転を容認
・運転者の無免許運転を黙認
運転をしていない人に責任は生じないと考える人も多いですが、上記のようなケースでは同乗者にも事故を起こした責任があると考えられます。
それぞれの過失について、以下で詳しく解説していきましょう。
運転者の飲酒運転を黙認
運転者の飲酒運転を黙認していた場合、賠償額の減額のみならず、同乗者も飲酒運転同乗罪として罰せられる可能性があります。
飲酒運転に関しては、運転者の状態が「酒気帯び」か「酒酔い」かによって刑罰が変わります。
酒気帯びは、呼気検査で基準以上のアルコール反応が出た状態。酒酔いは、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態です。
状況にもよりますが、運転者が酒気帯び運転に該当した場合の同乗者の刑罰は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金。
酒酔い運転に該当した場合の同乗者の刑罰は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。
運転者の危険運転を容認
運転者の危険運転を容認していた場合、賠償額が減額される可能性があります。
危険運転の容認として該当するのは、たとえば運転者の蛇行運転・信号無視・あおり運転を制止せずに放置していた場合などです。
危険運転を容認するような行為が発覚すると、交通事故による損害を受けたとしても賠償額が減額され、十分な賠償額を受け取れなくなってしまいます。
それだけでなく、運転者に危険運転致死傷罪、妨害運転罪等が成立する場合には、同乗者も共犯として刑事処分がされたり、免許取消等がなされる可能性もあります。
運転者の無免許運転を黙認
運転者の無免許運転を黙認していた場合も、飲酒運転と同様に同乗者が罰せられる可能性のあるケースです。
無免許運転は単に免許を持っていないだけではなく、免停中や免許証の有効期限が切れた状態での運転も該当します。
無免許運転の黙認による同乗者の刑罰は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。
交通事故による被害者がいた場合、運転者はもちろん同乗者にも責任が生じるため、損害賠償として治療費や慰謝料を支払わなければならない可能性もあります。
同乗者が受けられる保険の補償
交通事故に遭った際、同乗者が補償を受けられる保険には「自賠責保険」と「任意保険」の2種類があります。
自賠責保険と任意保険では、補償される範囲や受け取れる保険金額に差があるため、損害賠償の請求相手が加入している保険はよく確認しておきましょう。
自賠責保険
自賠責保険は、すべての自動車に対して加入が義務付けられている強制保険です。
そのため、損害賠償を請求する相手が任意保険に加入していなかったとしても、自賠責保険の補償は受けられます。
自賠責保険は人身事故のみを対象とする保険であるため、車や物を破損させた場合などの物損事故のケースでは補償が受けられません。
また、最低限の被害者の救済を目的としているため、被害が大きい場合には十分な補償を受け取れない可能性があります。
任意保険
強制保険である自賠責保険とは違い、自分の意思で加入を決められるのが任意保険です。
自賠責保険では事故が起こった際の補償が十分でないケースもあるため、運転者には任意保険への加入が推奨されています。
任意保険には多くの種類があり、契約内容によって補償の種類が異なるのが特徴です。
損害賠償の請求先である運転者が家族の場合は、契約している任意保険の内容をよく確認しましょう。
一般的な自動車保険では「対人賠償責任保険」においては、家族は免責の対象となり、保険金を受け取れない可能性があります。
同乗していた車が事故に遭った際には適切な相手に損害賠償請求を
同乗者として交通事故の被害に遭った際、基本的には乗っていた車の運転手や相手方の運転手に損害賠償請求ができます。
ただし、事故の状況によって損害賠償の請求を行うべき相手が異なる場合があるため、適切な請求先を見定める必要があるでしょう。
請求相手が加入している保険会社などによって提示される賠償金額は異なりますが、弁護士に依頼すると大幅に増額できる可能性があります。
同乗者の損害賠償請求は複雑である場合が多いため、悩んだら交通事故に強い弁護士に相談するのがおすすめです。
当事務所のWEBサイトをご覧いただきありがとうございます。福井県内での移動は、車での移動が当たり前の「車社会」になっています。ただし、その反動として、福井において、不幸にして交通事故に遭われてしまう方が多数いることも事実です。しかしながら、福井県民の中で、交通事故の被害に遭ったときに弁護士の相談するという発想自体がないこと、弁護士が入れば適正な賠償金額を得ることが出来るということ等を知らない人が多いと実感しています。もし、皆様の周囲で交通事故被害に遭い、お悩みになられている方がいらっしゃいましたら、まずはお気軽にご相談下さい。
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