人身事故と物損事故の違いについて
2022年12月16日
交通事故は、損害を受けた対象によって「人身事故」と「物損事故」に分類されます。
人身事故であった場合に物損事故として届け出てしまうと、その後に受けられる保障内容に大きく影響する可能性があるため注意が必要です。
今回の記事では人身事故と物損事故の違いや、物損事故から人身事故に切り替える方法などについて解説していきます。
交通事故による損害に対して適切な賠償金を受け取るために、ぜひ参考にしてみてください。
人身事故と物損事故の違い
人が死傷した交通事故を人身事故、人に被害がなく物品のみが損壊した交通事故を物損事故といいます。
人身事故と物損事故の大きな違いは、次のとおりです。
・物損事故には刑事罰が適用されない
・物損事故は違反点数が加算されない
・物損事故は自賠責保険適用外
・物損事故は慰謝料が認められないのが原則
事故後に痛みなどの自覚症状がなかったとしても、後から痛みや痺れなどの症状が現れる可能性もあります。
安易に物損事故と判断するのは避けて、必ず医療機関を受診するようにしましょう。
人身事故と物損事故の詳しい違いについて、以下で解説していきます。
物損事故には刑事罰が適用されない
物損事故には、一般的に刑事罰が適用されません。
人身事故の加害者は事故の状況によって、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪などの刑事罰に問われる可能性があります。
対する物損事故で成立する可能性のある刑事罰として、車などの破損による器物損壊罪を考える人は多いでしょう。
しかし、器物損害罪を成立させるには加害者の故意が要件となります。
故意とは、一定の結果が起こるかもしれないと認識した上であえてする行為を指すため、予測のできない交通事故(物損事故)では基本的に故意は認められません。
物損事故は違反点数が加算されない
物損事故を起こしたとしても、加害者に違反点数は加算されないのが通常です。
そのため、免停やゴールド免許剥奪にはなりません。
対して、人身事故の場合、加害者には事故の程度に応じた違反点数が加算されます。
ただし、交通違反行為をしていたり建物を損壊したりした場合は、物損事故の場合でも一定の違反点数が加算される点には注意してください。
物損事故は自賠責保険適用外
物損事故は、自賠責保険の適用外となります。
自賠責保険は被害者の死傷に対する最低限の補償を行う保険であるため、物損事故は対象になりません。
そのため、物損事故による損害は加害者が加入している任意保険、または加害者自身が賠償責任を負います。
加害者本人に損害賠償請求を行う場合、加害者に支払能力がなければ賠償金が受け取れなくなってしまう可能性もあるため注意が必要です。
物損事故は慰謝料が認められないのが原則
物損事故は慰謝料が認められないのが原則という点に注意する必要があります。
慰謝料とは、被害者が受けた精神的苦痛に対する損害賠償です。
交通事故における慰謝料には、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の3つがあり、いずれも被害者が死傷した人身事故に対する賠償となっています。
物損事故では損害を受けた車両の修理費などは請求可能ですが、精神的苦痛を認められるケースはほとんどないため、原則として慰謝料の請求はできません。
物損事故を人身事故へ変更するには
物損事故として警察に届け出た交通事故を人身事故へ変更するには、警察と加害者側の保険会社に変更の連絡をする必要があります。
まずは、交通事故が原因でケガをしたと証明するために病院の診断書を用意してから、警察署に連絡しましょう。
物損事故から人身事故に切り替える流れについて、以下で詳しく解説していきます。
警察に依頼
警察に人身事故への切り替えを依頼する際に提出する診断書には、受傷日・初診日・治療期間・交通事故とケガの因果関係等の記載が必要です。
医療機関を受診した際は、必ず交通事故が原因であると伝えて、診断書に記載してもらうようにしましょう。
事故発生日から期間が経過していると交通事故とケガの因果関係の証明が難しくなるため、痛みや症状が発生したら速やかに病院へ行き、人身事故への切り替え手続きを進めてください。
人身事故に切り替わると、警察による実況見分や当事者への取り調べなどが行われ、実況見分調書などの書類が作成されます。
保険会社に連絡
物損事故から人身事故に変更した際は、加害者側の保険会社にも連絡をしましょう。そのときに、人身事故に切り替わった交通事故証明書を提出するとよいと思います。
日数の経過などにより警察で人身事故への切り替えをしてもらえず、交通事故証明書を提出できない場合は、代わりに「人身事故証明書入手不能理由書」を提出する必要があります。
人身事故証明書入手不能理由書とは、人身事故の交通事故証明書が入手できない理由を証明するための書類です。
フォーマットは各保険会社が所有しているため、取り寄せてから作成しましょう。
物損事故で人身事故にすべきか迷ったら弁護士に相談しよう
交通事故を人身事故として届け出るか、物損事故として届け出るかによって、その後の手続きや賠償額に大きな違いがあります。
痛みがないからといって安易に物損事故として処理してしまうと、後悔する結果になりかねないため慎重に判断しましょう。
交通事故に遭ったら、痛みなどの自覚症状がなかったとしてもまずは病院を受診して、必要な検査を受けることをおすすめします。
ケガの症状と交通事故の因果関係を巡って、加害者側とトラブルになるケースも考えられるため、早めに専門家である弁護士に相談しておくと安心できるでしょう。
当事務所のWEBサイトをご覧いただきありがとうございます。福井県内での移動は、車での移動が当たり前の「車社会」になっています。ただし、その反動として、福井において、不幸にして交通事故に遭われてしまう方が多数いることも事実です。しかしながら、福井県民の中で、交通事故の被害に遭ったときに弁護士の相談するという発想自体がないこと、弁護士が入れば適正な賠償金額を得ることが出来るということ等を知らない人が多いと実感しています。もし、皆様の周囲で交通事故被害に遭い、お悩みになられている方がいらっしゃいましたら、まずはお気軽にご相談下さい。
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