交通事故紛争処理センターとは?利用方法と利用できないケース
2023年07月31日
交通事故の示談交渉がスムーズに進まない際、中立かつ公正な立場から橋渡ししてくれる機関として、交通事故紛争処理センターという公益財団法人があります。
利用料金がかからないため費用を抑えて紛争解決を目指せますが、利用する際には注意しなければならない点もあるため、慎重な判断が必要です。
今回の記事では、交通事故紛争処理センターの概要やメリット・デメリットについて詳しく解説します。
利用する際の流れについても紹介するため、交通事故紛争処理センターの利用を検討している人はぜひ参考にしてみてください。
交通事故紛争処理センターとは
交通事故紛争処理センターとは、自動車事故の示談交渉における当事者間の紛争を解決するために、間に立って交渉のサポートを行ってくれる機関です。
主に次のような業務を実施しており、無料で利用できます。
・相談担当弁護士の紹介
・交通事故の示談交渉に関する法律相談
・示談のあっ旋
・示談が不成立となった場合の審査手続き
利用する際の流れや全国の拠点について、以下で詳しく見ていきましょう。
交通事故紛争処理センター利用の流れ
交通事故紛争処理センターを利用する際の基本的な流れは、以下のとおりです。
1. 法律相談の電話予約
2. 送付された利用申込書に必要事項を記入
3. 指定された日時に支部・相談室へ出向き、必要書類を提出
4. 担当弁護士へ法律相談
5. 示談のあっ旋
6. 示談不成立の場合、審査申し立て
7. 審査会による裁定
法律相談によって示談のあっ旋が必要と判断されると、示談あっ旋の手続きに移行します。
担当弁護士から提示された示談案に当事者双方が合意すれば、示談成立です。
しかし、示談案に納得がいかず不成立となった場合は、審査手続きを進めます。
審査申し立てができるのは示談不成立の通知を受けてから14日以内と定められており、期間内に審査申し立てを行わなければならないため注意してください。
全国の交通事故紛争処理センター
交通事故紛争処理センターは、全国11ヶ所に支部・相談室が設置されています。
センターの拠点一覧は以下のとおりです。
・東京本部
・札幌支部
・仙台支部
・名古屋支部
・大阪支部
・広島支部
・高松支部
・福岡支部
・さいたま相談室
・金沢相談室
・静岡相談室
必要書類の提出や面談の際は、最寄りのセンターで手続きを行いましょう。
交通事故紛争処理センターを利用するメリット
交通事故紛争処理センターを利用するメリットは、次の3つです。
・比較的スムーズに解決する
・費用を抑えられる
・賠償金を増額できる可能性がある
示談交渉が思うように進まない場合や、費用をできるだけ抑えて紛争を解決したい場合に利用を検討するといいでしょう。
各メリットについて、以下で具体的に解説していきます。
比較的スムーズに解決する
裁判よりも比較的スムーズな解決が見込めるのは、交通事故紛争処理センターを利用するメリットの一つです。
示談交渉が決裂し裁判になった場合、早ければ6ヶ月程度、平均では1年程度の期間がかかります。
しかし、交通事故紛争処理センターを利用した場合、多くの場合申し立てから2~3ヶ月程度で手続きが終了します。
交通事故による紛争を早期に解決できれば、被害者の心理的・時間的負担は軽減されるでしょう。
費用を抑えられる
交通事故紛争処理センターでは、法律相談や示談あっ旋・審査手続きによる利用料金はかかりません。
裁判の場合、訴訟費用や弁護士費用などさまざまな費用が発生するため、経済的な事情で裁判手続きを進められない人もいるでしょう。
しかし、交通事故紛争処理センターであれば、申立人が費用を負担する必要なく紛争解決に向けた支援の依頼が可能です。
無料で利用できるのは、費用を抑えて紛争を解決したい人にとって、大きなメリットといえます。
賠償金を増額できる可能性がある
賠償金を増額できる可能性がある点も、交通事故紛争処理センターを利用する一つのメリットです。
損害賠償金を算定する基準には、自賠責保険基準・任意保険基準・裁判所基準(弁護士基準)の3つがあります。
任意保険基準の算定方法は保険会社によって異なりますが、基本的に最低限の補償となる自賠責保険基準がもっとも低額で、裁判所基準がもっとも高額となる傾向です。
交通事故紛争処理センターの示談案では裁判所基準で算定するため、加害者側の保険会社から提示された金額より高額な賠償金を受け取れる可能性があります。
交通事故紛争処理センターを利用するデメリット
交通事故紛争処理センターの利用にはメリットが多いように思えますが、以下のようなデメリットも存在します。
・利用できないケースがある
・賠償額が確定してからでないと利用できない
・資料などの用意に手間がかかる
無料だからといって安易に利用するのではなく、デメリットも把握した上で慎重に検討するようにしてください。
それぞれのデメリットについて、以下で一つずつ解説していきます。
利用できないケースがある
交通事故紛争処理センターは、すべての交通事故で利用できるわけではありません。
利用対象外とされているのは、以下のようなケースです。
・加害者が自動車でない交通事故(自転車と歩行者・自転車と自転車など)
・被害者自身が契約している保険に関する紛争
・後遺障害の等級認定に関する紛争
・保険会社・医療機関・社会保険などの求償に関する紛争
・加害者側の保険会社などが不明の場合
また、以下のケースでは、加害者側が同意した場合にのみ交通事故紛争処理センターを利用できる可能性があります。
・加害者が任意自動車保険契約をしていない場合
・加害者が契約している任意保険の約款に被害者の直接請求権の規定がない場合
・加害者が契約している任意保険が、JA共済連・こくみん共済coop・交協連・全自共・日火連以外の場合
利用できないケースに当てはまっていないか、よく確認した上で利用を検討しましょう。
賠償額が確定してからでないと利用できない
交通事故紛争処理センターは、賠償額が確定してからでないと利用できません。
賠償額が確定するタイミングは被害の程度によっても異なりますが、まず治療を受けている医療機関の担当医師から治療完了の診断を受ける必要があります。
事故の加害者側と紛争が生じてから、すぐに利用できるわけではないため、注意が必要です。
資料などの用意に手間がかかる
交通事故紛争処理センターを利用する際は、利用申込書の作成のほか、交通事故証明書や事故発生状況報告書・賠償金提示明細書など、さまざまな書類の準備が必要です。
必要書類は基本的に申立人である被害者自身で準備する必要があり、一定の手間や時間が必要となります。
また、手続きを進めるにはセンターの支部や相談室に出向く必要があり、移動時間や交通費も考慮しなければなりません。
これらの手続きを負担に感じる人は、弁護士への依頼も検討してみるといいでしょう。
交通事故紛争処理センターは中立的な立場のため、必要に応じて弁護士への相談も検討しよう
交通事故紛争処理センターは、あくまでも中立公正な立場から示談あっ旋を行っている機関です。
そのため、被害者の立場に立ったり、被害者の利益を優先したりはしてくれません。
利用する際のメリットとデメリットをしっかりと比較した上で、依頼するかどうかを検討しましょう。
被害者の立場に寄り添ったサポートを受けたい場合は、交通事故に強い弁護士へ相談してみるのがおすすめです。
当事務所のWEBサイトをご覧いただきありがとうございます。福井県内での移動は、車での移動が当たり前の「車社会」になっています。ただし、その反動として、福井において、不幸にして交通事故に遭われてしまう方が多数いることも事実です。しかしながら、福井県民の中で、交通事故の被害に遭ったときに弁護士の相談するという発想自体がないこと、弁護士が入れば適正な賠償金額を得ることが出来るということ等を知らない人が多いと実感しています。もし、皆様の周囲で交通事故被害に遭い、お悩みになられている方がいらっしゃいましたら、まずはお気軽にご相談下さい。
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