交通事故の民事裁判の流れ|交通事故は民事裁判を起こすべき?
2022年06月17日
交通事故による賠償額は示談交渉によって決められる場合が多いですが、交渉が決裂するなどした際には民事裁判に発展するケースもあります。
民事裁判という言葉を知っていても、裁判を起こす判断基準や手続きの進め方について、よくわからないという人は多いのではないでしょうか。
今回の記事では。民事裁判を提起する基準や手続きの流れ、メリット・デメリットなどを解説していきます。
ぜひ参考にしてみてください。
交通事故で民事裁判になる状況
交通事故の当事者同士で話し合いをしても解決が見込めない場合は、民事裁判の検討が必要になります。
基本的に交通事故が起こった際は、被害者と加害者双方が納得する条件で示談が成立し、和解するケースが多いです。
しかし、事故の責任の割合(過失割合)や、保険会社側の提示する損害賠償の金額が低額であったり、加害者が話し合いに応じる気がなかったりすると示談するのは難しくなります。
このような場合には、民事裁判を起こした方がスムーズな問題解決につながる可能性が高いでしょう。
裁判を起こすかの判断基準
交通事故の被害者が民事裁判を起こすかどうかの判断基準は、次の3つです。
・最終的に受け取れる損害賠償金の増額を見込めるか
・弁護士費用特約を使えるか
・加害者の支払い能力
民事裁判を起こして損害賠償を請求する場合、損をしないために裁判費用や加害者の支払い能力について知っておく必要があります。
以下で詳しく解説しますので、チェックしていきましょう。
最終的に受け取れる損害賠償金の増額を見込めるか
最終的に受け取れる損害賠償金の増額を見込めるかは、裁判を起こす際の重要な判断基準となります。
裁判を起こして損害賠償を受け取れたとしても、その金額が裁判前に保険会社から提示されていた金額とほとんど変わらない、もしくは減額してしまったというケースも考えられるためです。
裁判手続きを使うことによって、最終的に受け取れる損害賠償金の増額を見込めるか、それらを自分で判断するのは難しいので、裁判を起こす前に一度弁護士へ相談するのをおすすめします。
最終的に受け取れる損害賠償金について相談し、民事裁判をするべきかどうかのアドバイスをもらいましょう。
そのときには、訴訟費用と弁護士費用も確認したほうがよいでしょう。
弁護士費用特約を使えるか
民事裁判をする場合については、どうしても弁護士費用等が依頼者の負担となってしまいます。
交通事故による被害が軽微な場合など、賠償金が少ないケースでは弁護士費用の方が高くなってしまうケースもあります。
弁護士費用特約を利用すれば、弁護士費用が実質無料となる場合がありますので、ご自身やご家族の自動車保険をご確認ください。
被害者ご自身の保険契約に弁護士費用特約が付いていなくても、被害者の方の配偶者(内縁を含む)や同居の親族が加入している自動車保険等に付いている弁護士費用特約を利用できる場合もあります。ぜひご確認ください。
また、弁護士費用特約が使えない場合については、費用倒れにならないよう、賠償額の見通しや弁護士費用について、事前に弁護士によく確認しておくようにしてください。
加害者の支払い能力
加害者の支払い能力も、民事裁判を起こすかどうかの判断基準となります。
損害賠償金を支払うように命じる判決を裁判所が出したとしても、加害者側に支払い能力がなければ回収できないからです。
たとえば加害者が保険に入っておらず、無職・無収入などのケースでは、加害者側に支払い能力がなく回収できない場合も多いでしょう。
加害者が任意保険に加入していれば保険会社に損害賠償を請求できますので、基本的には支払い能力を気にする必要はありません。
事故の相手が任意保険未加入の場合には、加害者側の収入や資産状況の確認を事前にするようにしましょう。
また、相手が任意保険未加入の場合にも、自賠責保険、人身傷害補償保険、無保険車傷害特約等などの保険を活用することによって、加害者から回収できない損害賠償金に相当する保険金を得ることができる可能性があります。
相手が任意保険未加入の場合については、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
交通事故の民事裁判の流れ
交通事故による民事裁判の流れは、次のとおりです。
1. 訴状の提出
2. 口頭弁論・証拠提出
3. 尋問
4. 和解勧告
5. 和解不成立時は判決
6. 賠償金の支払いまたは控訴手続き
裁判を起こしてから解決するまでの期間は、とくに問題となる点がないケースであっても6カ月~1年程度かかるのが一般的です。
被害者に重度の後遺障害が残っているなど、争う問題が多ければ判決が出るまでに2年以上かかる場合もあります。
1.訴状の提出
民事裁判を起こすために、まずは裁判所に訴状を提出する必要があります。
訴状とは、裁判を起こす人(原告)が訴えの内容を記載した書面です。
基本的には、求める損害賠償額が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所に提出します。
訴状を提出する際は、主張する内容を証明するための書類を添えることになります。
主な証拠書類は、以下のとおりです。
・交通事故証明書
・診断書・後遺障害診断書
・治療費の領収書・明細書
・休業損害証明書
・収入証明書
2.口頭弁論・証拠提出
訴状を提出してから1~2カ月程度の日程で、口頭弁論期日が指定されます。
1回目の口頭弁論で行われるのは、原告が提出した訴状と証拠の確認や、被告が作成した答弁書の内容の確認などです。
1回目の口頭弁論が終わった後も、1カ月に1回程度のペースで口頭弁論が行われます。
弁護士に依頼している場合は弁護士が代理人として出頭するので、本人が裁判所に行く必要は基本的にありません。
原告・被告側の双方の主張や反論が記載された書面と、主張する内容を証明する証拠を提出しながら裁判を進めていきます。
3.本人尋問・証人尋問
民事裁判になって、証拠調べの最終段階となるのが、本人尋問・証人尋問です。
過失割合で争いがある場合等に、本人尋問・証人尋問が行われることがあります。必ずしも民事裁判のすべてで行われるわけではありません。
尋問とは、弁護士や裁判官からの質問に対して証人が口頭で答えることです。
尋問で話された内容は裁判の証拠となります。
尋問が行われる場合、原告本人や被告本人や、事件の関係者が証人として、裁判の期日に来てもらうことになります。
4.和解勧告
主張と証拠が出そろったあと、多くの場合裁判所から和解案が提示されます。
原告と被告双方が和解に応じた場合、裁判は終了です。
和解した場合、同じ内容で再度訴えるのは原則としてできないので、慎重な判断が必要になります。
判決となった場合に受け取れる金額の見通しや、裁判が続く際の負担などを考慮して、和解するかどうかを検討しましょう。
個人で判断するのは難しいケースが多いので、経験豊富な弁護士に相談しながら進めるのをおすすめします。
5. 和解不成立時は判決
和解が成立しなかった場合、判決が言い渡される日程が裁判所から指定されます。
言い渡される日に出頭しなかったとしても、後日郵便で届く判決書で内容を把握できるため、欠席する人がほとんどです。
次に説明する、控訴手続きがされなければ裁判は判決により終了となります。
6. 賠償金の支払または控訴手続き
判決確定後、控訴が行われなければ1カ月程度で、保険会社から賠償金の支払いがされます。
判決に不服があった際、判決書の送達日から2週間以内であれば控訴状を提出して控訴が可能です。
控訴状の提出期間が短いため、控訴の提起後50日以内に「控訴理由書」を提出するのが一般的な流れになります。
控訴理由書とは、出された判決の取り消しまたは変更を求める具体的理由を示した書面です。
原則として、控訴理由書が控訴審で審査される際の重要なポイントになるので、慎重に作成する必要があります。
交通事故で民事裁判を起こすメリット・デメリット
交通事故で民事裁判を起こすかどうかを判断するにあたって、裁判のメリットとデメリットは事前に把握しておく必要があります。
交渉の状況や被害の程度などによって、メリット・デメリットのどちらが大きくなるかが異なるので、それぞれしっかりと理解しておくようにしましょう。
民事裁判を起こすメリット
民事裁判を起こすメリットは、次のとおりです。
・弁護士基準で多くの損害賠償金を受け取れる
・遅延損害金、弁護士費用が受け取れる
・相手方の合意の有無にかかわらず争いを解決できる
最大のメリットは、弁護士基準で損害賠償が計算されるため、多くの賠償金を受け取れる可能性がある点です。
また交通事故の損害は交通事故発生日から生じるので、損害賠償金の支払いが遅れているものとして、遅延損害金を受け取れます。また、損害賠償金の約1割程度の弁護士費用を損害として受け取ることができます。
示談交渉では被害者と加害者双方の合意が必要になりますが、民事裁判で出される判決に合意は必要ありません。
そのため、相手方が交渉に応じない場合などでも争いを解決できるのは、民事裁判を起こすメリットといえるでしょう。
裁判を起こすデメリット
民事裁判を起こすデメリットは、次のとおりです。
・解決までに長期間かかる
・裁判上の手続きや準備に手間がかかる
・裁判費用、弁護士費用がかかる
状況によって異なりますが、交通事故の民事裁判では解決するまでに6カ月~2年程度かかります。
訴えるまでの手続きや証拠・尋問の準備など、法的知識がない被害者にとって非常に労力がかかるのはデメリットです。弁護士に依頼することをおすすめします。
訴訟費用や弁護士費用といった裁判に関しての費用がかかるというのも、念頭に置いておかなければなりません。弁護士費用特約を利用すれば、弁護士費用が実質無料となる場合がありますので、ご自身やご家族の自動車保険をご確認ください。
判決が出るまでにかかる手間や費用を十分に考慮した上で、民事裁判を提起するかどうかを判断しましょう。
交通事故で民事裁判を考えたら早めに弁護士に相談しよう
交通事故で民事裁判を起こす場合、主張・反論の整理や証拠集めなど、複雑な工程が多いため負担が大きくなりがちです。
民事裁判を起こす際は自己判断で踏み切らず、まず交通事故に強い弁護士に相談してください。
民事裁判のメリットとデメリットのどちらが大きいか、その適切な判断を法律に慣れていない人がするのは難しいため、早い段階で相談するのをおすすめします。
有利な結果を得られるように、弁護士のアドバイスを受けながら慎重に進めていきましょう。
当事務所のWEBサイトをご覧いただきありがとうございます。福井県内での移動は、車での移動が当たり前の「車社会」になっています。ただし、その反動として、福井において、不幸にして交通事故に遭われてしまう方が多数いることも事実です。しかしながら、福井県民の中で、交通事故の被害に遭ったときに弁護士の相談するという発想自体がないこと、弁護士が入れば適正な賠償金額を得ることが出来るということ等を知らない人が多いと実感しています。もし、皆様の周囲で交通事故被害に遭い、お悩みになられている方がいらっしゃいましたら、まずはお気軽にご相談下さい。