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交通事故における無過失責任とは?

2023年02月27日

損害が発生した際、故意や過失がなくても損害賠償責任を負うことを、無過失責任と言います。

交通事故問題においても無過失責任という言葉を聞くケースはありますが、実際にどのようなケースで使われる可能性があるのか、詳しく知っている人は少ないでしょう。

今回の記事では、無過失責任について解説していきます。

車を運転している人であれば知っておくべき内容となるため、ぜひ最後までご覧ください。

 

無過失責任とは?

無過失責任とは、加害者に故意や過失がなかったとしても、被害者は損害賠償を請求できるという考え方です。

交通事故の場合を前提に、以下の流れで解説していきます。
・民法
・自賠法
・中間責任とは
・事実上の無過失責任とは

交通事故に適用される民事法は、民法と自賠法(自動車損害賠償保障法)の2つです。

上記の法律で無過失責任がどのように規定されているのか、詳しく解説します。

また無過失責任に関連する「中間責任」や「事実上の無過失責任」という考え方についても、あわせて確認しておきましょう。

民法

人に怪我などを負わせた場合の損害賠償責任について、民法第709条および710条では以下のとおり定められています。

(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

709条では、他人の権利や法律上保護される利益を侵害した場合は、不法行為によって生じた損害を賠償しなければならないと規定されています。

そして710条では。財産以外の損害、つまり精神的損害に対しても賠償責任を負うと定められています。

ただし709条には「故意又は過失によって」と示されているため、故意や過失がなければ、原則として不法行為による損害賠償責任は発生しません。

民法では、損害の発生について、故意や過失がある場合にのみ賠償する責任を負う「過失責任」という考え方が適用されているからです。

自賠法

自賠法(自動車損害賠償保障法)は、自動車の運転によって人の生命または身体が害された場合に、損害賠償を保障する制度を確立させるための法律です。

被害者の保護と、自動車運送の健全な発達を目的としています。

自賠法の損害賠償責任に関する規定は、第3条で定められており、内容は以下のとおりです。

(自動車損害賠償責任)
第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

自賠法の第3条では、運転をした者や自分のために運転をさせた者について、その運転によって他人の生命または身体を害したときは、損害賠償責任を負うと規定されています。

民法のように、「故意又は過失によって」の文言は含まれていません。

そのため、自動車を運転している人が他人に損害を与えた場合、過失などがなくても損害賠償責任を負う「無過失責任」であるとも思えます。

しかし、但し書きの条件を加害者が証明すれば例外的に責任を負わずにすむので、実際は後述する中間責任にあたります。

故意・過失のない交通事故が起きてしまった場合には、自身でしっかりと主張し、損害賠償責任はないと証明する必要があるのです。

中間責任とは

無過失責任と似ているものとして、「中間責任」という考え方があります。

中間責任とは、過失の有無についての立証責任を加害者に求めることです。

損害が発生した場合でも、加害者自身に過失はなかったと立証できれば、損害賠償責任を例外的に免責するとしています。

通常の損害賠償請求では、加害者の過失の主張・立証をするのは被害者です。

しかし、中間責任の規定があれば、被害者ではなく加害者に立証責任が転換されるため、被害者の労力や負担は大幅に軽減されます。

過失責任と無過失責任の中間をとる立場での考え方として、中間責任と呼ばれています。

事実上の無過失責任とは

自賠法3条の中間責任の規定は、事実上の無過失責任とも呼ばれています。

加害者が自身の無過失を主張するためには、以下3点の証明が必要であるからです。
・自己および運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと
・被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと
・自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったこと

上記で挙げた内容を立証し、認められれば免責となりますが、実際には3点の立証は非常に困難です。

そのため、加害者の免責が認められるケースはほとんどなく、被害者が損害賠償を受けやすい状況であるのが実情といえます。

法律的には中間責任ではありますが、自賠法3条は要件充足の困難さから事実上の無過失責任とされているのです。

 

交通事故で責任を追求する場合は弁護士に相談しよう

自賠法3条が事実上の無過失責任とされていることらか、交通事故の被害者は、損害賠償を請求をしやすいといえます。

とはいえ、被害者側であっても、交通事故の事実関係を証明できるように、普段から安全運転を心がけ、ドライブレコーダーの設置などできる限りの対策をとっておきましょう。

加害者側から過失相殺を主張されることもよくあります。

加害者から過失相殺に関する主張等を主張している場合は、早い段階で交通事故問題に強い弁護士へ相談するのをおすすめします。

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