交通事故で同乗者が怪我をした場合の治療費や慰謝料
2023年06月19日
交通事故は運転者だけでなく、同乗者にも深刻な損害をもたらします。
同乗者が事故で怪我を負った場合に、治療費や慰謝料の支払いについてどのように対処すべきか悩んでいる人も多いでしょう。
今回の記事では、交通事故で同乗者が怪我をした場合の治療費や慰謝料の請求先、適用できる保険の種類について詳しく解説します。
同乗者の慰謝料が減額してしまうケースについても解説するため、ぜひ参考にしてみてください。
同乗者が交通事故で怪我した場合の慰謝料請求先
交通事故で同乗者が怪我をした場合の慰謝料請求先は、主に3つのケースが考えられます。
・運転手と交通事故の相手
・運転手
・交通事故の相手
慰謝料の請求先が運転手と交通事故の相手のどちらになるかは、事故の状況や責任の所在によって異なります。
それぞれの請求先について、以下で詳しく確認していきましょう。
運転手と交通事故の相手
運転手と交通事故の相手の双方に過失がついている場合は、被害者である同乗者はどちらに対しても慰謝料を請求できます。
当事者双方になんらかの過失がつく交通事故が多いため、同乗者が両者に慰謝料請求できるケースも多いといえるでしょう。
運転手と交通事故の相手、それぞれに何割ずつ請求するかは、同乗者が自由に決められます。
ただし、慰謝料の二重取りはできないので注意してください。
運転手
交通事故の相手に過失がなく、同乗していた車の運転手にのみ過失があるケースでは、同乗者は運転手にのみ慰謝料を請求できます。
運転手が加入している自賠責保険や任意自動車保険から、同乗者が受けた損害に応じた金額を支払われるのが一般的です。
ただし、運転手が家族であった場合、任意保険の対人賠償保険は免責となるため注意しましょう。
人身傷害補償保険や搭乗者傷害保険など、対人賠償保険のほかに適用できる保険を契約していれば、家族であったとしても慰謝料請求が可能です。
交通事故の相手
運転手に過失がなく、交通事故の相手にのみ過失があるケースでは、同乗者は交通事故の相手に対して慰謝料を請求可能です。
交通事故の相手にのみ過失がつく事故の例としては、信号待ちや渋滞中で停車しているときに追突されるもらい事故などが挙げられます。
この場合、交通事故の相手方が加入している自賠責保険と任意保険から保険金が支払われるのが一般的です。
任意保険未加入などの理由によって支払ってもらえない場合は、運転手が加入している人身傷害保険や搭乗者傷害保険を利用できないか確認してみましょう。
同乗者の慰謝料が減額してしまうケース
同乗者の慰謝料が減額する可能性があるのは、次のようなケースです。
・安全運転の妨害をした
・好意同乗責任による減額
交通事故の被害者である同乗者であっても、事故の状況によっては受け取れる金額が減ってしまうため注意しましょう。
各ケースについて、以下で一つずつ解説していきます。
安全運転の妨害をした
同乗者が運転手の安全運転を妨害し、その結果事故が発生した場合、同乗者の受け取れる慰謝料が減額される可能性があります。
安全運転の妨害とみなされる具体的な行動は、以下のとおりです。
・運転手に対して加速や信号無視を促した
・運転中に大きな音を立てて驚かせた
・無理に長時間の運転をさせた
このような行為が発覚した場合、同乗者にも事故を引き起こした責任があると判断され、慰謝料の減額理由につながります。
好意同乗責任による減額
交通事故を起こした車の同乗者は、「好意同乗責任」による慰謝料減額の可能性もあります。
好意同乗責任とは、無償で車に乗せてもらっていた同乗者は、運転手に対する請求額を少なくすべきという考え方です。
最近の裁判例としては、好意同乗であっても、単に同乗者というだけで、原則、請求額は減額しないという取り扱いになっています。
ただし、例外はあって、同乗者自身において事故が発生する危険性を増大させたような場合、あるいは、事故が発生する危険性があることを承知の上で同乗していたような場合などは好意同乗責任が適用されることがあります。
好意同乗責任が適用されると、請求先の保険会社から10~20%程度の減額を求められるケースが多いです。
しかし、適用されるかどうかは事故の具体的な状況によって異なりますので、このような主張を保険会社からされた場合は、弁護士に相談してください。
交通事故の同乗者が使える交通事故の保険
交通事故の同乗者が利用できる保険には、次のような種類があります。
・対人賠償責任保険
・人身傷害補償保険
・搭乗者傷害保険
同乗者が利用できる保険は、事故の相手方や運転手の保険加入状況によって異なるため注意しましょう。
各保険がどのような場合に適用されるのか、以下で解説していきます。
対人賠償責任保険
同乗者が請求した損害賠償は、加害者が加入している自賠責保険と対人賠償責任保険から支払われるのが一般的です。
対人賠償保険とは、任意で加入する自動車保険の補償の一つで、人を死傷させる事故を起こした際に適用されます。
傷害事故の場合、自賠責保険の支払限度額は被害者一人につき120万円となっており、限度額を超えた分は対人賠償責任保険から支払われます。
加害者が任意保険に加入していない場合、自賠責保険の限度額を超える損害は加害者本人に対して請求が必要です。
人身傷害補償保険
同乗していた車の運転手が加入している任意保険に、人身傷害補償保険が含まれていれば、同乗者も補償を受けられます。
人身傷害補償保険とは、契約者本人・契約者の家族・契約車両に同乗していた人が交通事故で死傷した場合に、損害賠償金を補償してくれる保険です。
この保険のメリットとしては、契約車両以外に乗車していた際の交通事故でも補償を受けられる点が挙げられます。
搭乗者傷害保険
同乗していた車の運転手が加入している任意保険に、搭乗者傷害保険が含まれていれば、同乗者も補償を受けられます。
搭乗者傷害保険とは、契約車両に乗車している人が交通事故で死傷した場合に、一定金額が支払われる保険です。
人身傷害補償保険とは異なり、契約車両以外に乗車していたときの交通事故は補償対象になりません。
同乗者も事故の責任が問われるケース
運転手が運転してはならない状態であることを知りながら同乗した場合、同乗者にも事故の責任が問われ、刑事罰を科されるリスクがあります。
運転手の過失 | 同乗者の刑事罰 |
---|---|
無免許運転 | 2年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
酒気帯び運転 | 2年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
酒酔い運転 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
酒気帯び運転は飲酒後のアルコールが分解されない状態、酒酔い運転はアルコールの影響で正常に運転できないおそれがある状態で運転する行為です。
この状態で交通事故を起こした場合、同乗者も被害者から損害賠償請求される可能性があるため注意しましょう。
交通事故の同乗者は適切な相手に治療費や慰謝料を請求しよう
交通事故に遭った際、同乗者が治療費や慰謝料を請求できるのは、車の運転手、もしくは事故の相手方です。
適切な損害賠償を請求するためには、まず請求先を把握し、請求先の保険加入状況を確認する必要があります。
もし納得のいかない金額を提示された場合や、意見が食い違って話が進まない場合は、交通事故に強い弁護士へ相談するのがおすすめです。
専門家である弁護士に間に入ってもらうことで、被害者である同乗者の負担を軽減できるほか、受け取れる慰謝料の増額も期待できるでしょう。
当事務所のWEBサイトをご覧いただきありがとうございます。福井県内での移動は、車での移動が当たり前の「車社会」になっています。ただし、その反動として、福井において、不幸にして交通事故に遭われてしまう方が多数いることも事実です。しかしながら、福井県民の中で、交通事故の被害に遭ったときに弁護士の相談するという発想自体がないこと、弁護士が入れば適正な賠償金額を得ることが出来るということ等を知らない人が多いと実感しています。もし、皆様の周囲で交通事故被害に遭い、お悩みになられている方がいらっしゃいましたら、まずはお気軽にご相談下さい。