自賠責保険における慰謝料の7日加算とは
2023年03月14日
自賠責保険には、条件に応じて適用される「7日加算」という制度があります。
慰謝料増額の可能性がある7日加算がどのようなものなのか、どのようなケースで適用されるのか気になっている人は多いのではないでしょうか。
今回の記事では、7日加算の概要や7日加算が適用されるケースについて解説していきます。
ただし、7日加算が適用されても自賠責保険だけでは慰謝料は低額であることには注意する必要があります。
7日加算で慰謝料が増えるケースと増えないケースの違いについても詳しく解説するため、ぜひ最後までご覧ください。
自賠責保険慰謝料の7日加算とは?
自賠責保険の7日加算とは、入通院慰謝料を計算する際、一定の条件を満たした場合に7日間の治療期間が加算されることです。
入通院慰謝料は、交通事故の被害者が入院や通院等で負う精神的苦痛を補償するものです。
自賠責保険の入通院慰謝料の金額は、基本的に以下の計算式で算出されます。
日額4,300円×対象日数=入通院慰謝料 |
対象日数は、治療期間または入院日数・通院日数によって決定されます。
7日加算が適用されると、実際の治療期間よりも7日分長くなるため、状況によっては受け取れる慰謝料が増額されるケースもあるでしょう。
自賠責保険とは
自賠責保険とは、自動車やバイクを運転する人に加入が義務付けられている強制保険です。
交通事故による被害者の救済を目的としているため、人が死傷した人身事故でのみ適用されます。
自賠責保険は任意で加入する自動車保険とは異なり、損害の種類によって以下のとおり支払限度額が定められています。
損害の種類 | 限度額(被害者1名につき) |
---|---|
傷害による損害 | 120万円 |
後遺障害による損害 | 等級に応じて75万円~4,000万円 |
死亡による損害 | 3,000万円 |
自賠責保険の支払限度額を上回る損害を受けた場合は、限度額を超えた分を加害者が加入する任意保険会社や加害者本人に請求する必要があります。
加害者本人に請求する場合、加害者自身の支払能力によっては十分な損害賠償金を受け取れないケースも少なくないため注意しましょう。
7日加算が適用されるケース
7日加算が適用されるケースは、医師が発行した診断書に、以下のいずれかが記載された場合です。
・治癒見込
・継続
・転医
・中止
治癒見込
治癒見込とは、現時点で治癒したとはいえないが、今後治癒すると見込まれる状態です。
診断書の治療終了日に治癒見込と記載されている場合、例外的な措置として、治療期間に7日加算されます。
診断書に「治癒見込」ではなく「治癒」と記載されている場合は、7日加算の対象外となるため注意しましょう。
継続
継続とは、今後も継続的かつ計画的な治療をしていく必要がある状態です。
てんかんや精神疾患など、完治と判断するのが難しい病状の場合にも記載されます。
診断書に継続と記載されている場合も、7日加算の対象となります。
転医
転医は、病院や医師を変更する場合に記載されます。
診断書に転医と記載されている場合も、7日加算の対象です。
なお、交通事故のケガの治療中に転院するのは可能ですが、転院後の治療が「必要かつ相当」と認められなければ、補償を受けられない可能性もあるため注意しましょう。
やむを得ず転院する場合は、事前に加害者側の任意保険会社に伝え、現在通っている病院から紹介状をもらうなど対策しておくのがおすすめです。
中止
中止は、完治にはいたっていない状態で、諸事情により治療を中断する際に記載される内容です。
治療を続けてもこれ以上症状の改善が見込めない「症状固定」と判断された場合なども、中止に該当します。
診断書に中止と記載されていれば、7日加算の対象です。
なお、症状固定と診断され、痛みやしびれなどの後遺症が残ってしまった場合は、後遺障害等級申請を忘れずに行っておきましょう。
後遺障害の等級が認定されると、自賠責保険でも等級に応じた補償を受けられます。
7日加算による慰謝料の増減
7日加算が適用されると慰謝料が増額される可能性がありますが、必ずしも増額されるとは限りません。
自賠責保険の入通院慰謝料の算出方法は「日額4,300円×対象日数」となり、対象日数は次のどちらか短い方で計算されます。
・治療期間
・入院日数+(実通院日数×2)
「治癒見込」「継続」「転医」「中止」による7日加算は、治療期間に対するものであるため、「入院日数+(実通院日数×2)」で計算された場合は慰謝料に影響しません。
7日加算により慰謝料が増えるケースと増えないケースについて、以下でそれぞれ確認していきましょう。
7日加算で慰謝料が増えるケース
治療期間90日・通院日数60日の場合、以下のように入通院慰謝料を算出します。
【7日加算の適用前】 ・対象日数とされるのは治療期間90日 (治療期間90日<実通院日数60日×2=120日)・入通院慰謝料は387,000円 (日額4,300円×対象日数90日=387,000円) |
【7日加算の適用後】 ・対象日数とされるのは治療期間90日+7日=97日 (治療期間90日+7日=97日<実通院日数60日×2=120日) ・入通院慰謝料は417,100円 |
7日加算適用前の入通院慰謝料が387,000円、適用後の入通院慰謝料が417,100円となるため、7日加算によって慰謝料が30,100円増額しています。
7日加算で慰謝料が増えないケース
対して治療期間90日・通院日数30日の場合、以下のように入通院慰謝料を算出します。
【7日加算の適用前】 ・対象日数とされるのは通院日数30日×2=60日 (治療期間90日>実通院日数30日×2=60日)・入通院慰謝料は258,000円 (日額4,300円×対象日数60日=258,000円) |
【7日加算の適用後】 ・対象日数とされるのは通院日数30日×2=60日 (治療期間90日+7日=97日>実通院日数30日×2=60日)・入通院慰謝料は258,000円 (日額4,300円×対象日数60日=258,000円) |
7日加算が適用されたとしても、「入院日数+(実通院日数×2)」が対象期間として入通院慰謝料が計算された場合、慰謝料は増額されません。
上記のようなケース以外でも、傷害による損害が大きく自賠責保険の上限額120万円を超える場合は、7日加算による慰謝料増額は見込めないでしょう。
自賠責保険の7日加算が適用されるかどうかは診断書で確認
自賠責保険の7日加算の適用可否は、医師が発行した診断書の内容によって決まります。
7日加算が適用されると入通院慰謝料が増額される可能性がありますが、算出対象となる日数などによって増額されないケースもあるため注意しましょう。
なお、自賠責保険は交通事故の被害者に対して最低限の補償を行う保険であり、自賠責保険料だけでは損害を補えないケースも多いです。
7日加算が適用されても自賠責保険だけでは慰謝料は低額であることには注意する必要があります。
弁護士に依頼すると過去の判例をもとにした弁護士基準で算定でき、自賠責保険の算定基準よりも大幅に損害賠償金を増額できる可能性があります。
受け取れる金額を増やしたい人は、一度交通事故に強い弁護士に相談してみるのがおすすめです。
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