利益相反のご説明
1 はじめに
弁護士が交通事故や離婚、男女トラブルの法律問題のご相談を受ける際、必ず、ご相談希望の方の氏名、紛争の相手方の氏名などをフルネームで確認させて頂きます。
このような取扱いをさせていただいている理由について、これからご説明します。
まず、弁護士の活動は、「弁護士法」や「弁護士職務基本規程」などの定められたルールによって規律されています。
この中に、依頼者と利害が対立し、職務の公正を害する危険のある行為(これを「利益相反」といいます。)を禁止するというルールがあります。
例えば、交通事故の場合、交通事故の被害者側の代理人を務めている弁護士が同じ交通事故の加害者側の代理人として就任し弁護活動をすることは、このルールに違反するため、行うことができません。
また、離婚事件でいえば、妻から離婚の相談を受け具体的なアドバイスをしていた場合、その夫から離婚調停の申立ての依頼を受けることは、同じく利益相反として禁止されています。
そして、この利益相反の禁止というルールは、同じ事務所に所属する弁護士間にも適用されます。(弁護士職務基本規程57条)。
例えば、当事務所に所属する弁護士が、離婚協議の相手方(例えば、妻とします。)の相談を既に受けていた場合、当事務所に所属する他の弁護士が夫からの同じく離婚相談をお受けすることは、利益相反となります。
幸いなことに、当事務所に対して、福井県全域からの民事・刑事のご相談依頼が日々あります。
そのため、利益相反となってしまうことも、数は少ないですが、実際生じることがあります。
その場合、後にお問い合わせいただいた方のご相談自体をお受けできなくなることになります。
以上の理由から、お手数をおかけしますが、弁護士業務の公正・信頼維持のため、利益相反のご確認作業のご協力をお願いしている次第です。
2 参考条文
弁護士法(職務を行い得ない事件)
第25条 弁護士は、次に掲げる事件については、その職務を行つてはならない。ただし、第3号及び第9号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
- 一 相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件
- 二 相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの
- 三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
- 四 公務員として職務上取り扱った事件
- 五 仲裁手続により仲裁人として取り扱った事件
- 六 第30条の2第1項に規定する法人の社員又は使用人である弁護士としてその業務に従事していた期間内に、その法人が相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件であって、自らこれに関与したもの
- 七 第30条の2第1項に規定する法人の社員又は使用人である弁護士としてその業務に従事していた期間内に、その法人が相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるものであつて、自らこれに関与したもの
- 八 第30条の2第1項に規定する法人の社員又は使用人である場合に、その法人が相手方から受任している事件
- 九 第30条の2第1項に規定する法人の社員又は使用人である場合に、その法人が受任している事件(当該弁護士が自ら関与しているものに限る。)の相手方からの依頼による他の事件
弁護士職務基本規定(職務を行い得ない事件)
第27条 弁護士は、次の各号のいずれかに該当する事件については、その職務を行ってはならない。ただし、第三号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
- 一 相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件
- 二 相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの
- 三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
- 四 公務員として職務上取り扱った事件
- 五 仲裁、調停、和解斡旋その他の裁判外紛争解決手続機関の手続実施者として取り扱った事件
第28条 弁護士は、前条に規定するもののほか、次の各号のいずれかに該当する事件については、その職務を行ってはならない。ただし、第一号及び第四号に掲げる事件についてその依頼者が同意した場合、第二号に掲げる事件についてその依頼者及び相手方が同意した場合並びに第三号に掲げる事件についてその依頼者及び他の依頼者のいずれもが同意した場合は、この限りでない。
- 一 相手方が配偶者、直系血族、兄弟姉妹又は同居の親族である事件
- 二 受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供を約している者を相手方とする事件
- 三 依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件
- 四 依頼者の利益と自己の経済的利益が相反する事件